【佐賀大学】植物の低栄養耐性にmRNA配列調節が関わることを発見

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【研究者】

代表者:

西田 翔(佐賀大学農学部・鹿児島大学大学院連合農学研究科 准教授)

分担者や協力者:

榎本拓央(元佐賀大学農学部・現農研機構果茶研 研究員)

田中伸裕(農研機構作物研 主任研究員)

藤原 徹(東京大学大学院農学生命科学研究科 教授)

 

【研究成果の概要】

植物は土壌中に含まれる無機栄養素を吸収することで生育します。自由に移動することのできない植物は、過酷な栄養環境でも生育できる優れた環境適応能力を有していると考えられています。今回、本学農学部の西田 翔准教授を中心とした研究グループは、モデル植物であるシロイヌナズナを用いた研究から、植物の三大栄養素の一つであるカリウムの欠乏耐性に関わる新しい分子機構を発見しました。

先行研究において西田准教授らは、シロイヌナズナが低カリウム条件に曝されると、転写因子遺伝子「MYB59」がmRNA配列調節機構の一つである選択的スプライシングの制御を受けることでmRNAの配列が変化することを明らかにしていましたが、その意義については分かっていませんでした(Nishida et al. 2017 Plant J)。

今回研究グループは、低カリウム条件下でMYB59が選択的スプライシング制御を受けることで転写因子としての機能を発現させ、カリウム輸送を担うNPF7.3の発現を促すことで根から葉へカリウムが供給され、結果的に葉のカリウム不足を防いでいることを証明しました。これは、植物の低カリウム耐性にmRNAの配列調節が関わることを示す初めての成果です。

この研究成果は、2023年7月26日に国際学術雑誌「Plant and Cell Physiology」のオンライン版に掲載されました。

 

【研究成果の公表媒体(論文や学会など)】

雑誌名

Plant and Cell Physiology(Oxford Academic;2023年7月26日オンライン掲載)

論文タイトル

Role of potassium-dependent alternative splicing of MYB59 in maintenance of potassium concentration in shoots of Arabidopsis thaliana

DOI:

10.1093/pcp/pcad080

著者

Takuo Enomoto1,2, Nobuhiro Tanaka3, Toru Fujiwara4, Sho Nishida1,5

  1. 佐賀大学農学部
  2. 農研機構果茶研
  3. 農研機構作物研
  4. 東京大学大学院農学生命科学研究科
  5. 鹿児島大学大学院連合農学研究科

 

【今後の展開】

本研究をさらに発展させ、植物の低カリウム耐性のメカニズムを解明することで、将来的に作物の低カリウム耐性を強化する技術につなげたいと考えています。農林水産省の「みどりの食料システム戦略」において化学肥料の使用量の30%低減の目標が掲げられています。また、昨今のウクライナ危機に起因して肥料価格の著しい高騰が社会問題となっています。持続可能で安定的な社会を目指す上で、作物の低栄養耐性を強化し、化学肥料への依存度を低減することは、人類にとっての重要な課題であると考えています。(西田)

 

【その他PRしたい特記事項】

本研究は、日本学術振興会(16K18667、18KK0426、19H05637、22H02230)および文部科学省(18H05490、22H04815)の支援を受けて行われました。

研究室website:

Nishida lab

論文リンク:

Role of potassium-dependent alternative splicing of MYB59 in maintenance of potassium concentration in shoots of Arabidopsis thaliana
Abstract. Potassium (K) is a major plant nutrient. K+ is taken up by channel and transporter proteins in roots and translocated from roots to shoots via the xyl

シロイヌナズナの野生型(左)とMYB59欠損型(右)
欠損型の葉にはカリウム欠乏症状(黄化)が表れている。

MYB59のスプライシング調節を介した低カリウム耐性機構

MYB59は低カリウムに曝されると選択的スプライシング調節を受け、活性型のMYB59αが発現しNPF7.3を転写することで、葉のカリウム濃度を維持している。

詳細はこちら
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