【東邦大学】パーキンソン病における耳下腺・顎下腺交感神経障害 ~ パーキンソン病の病態解明に繋がる新規解析手法を開発 ~

news

東邦大学医学部内科学講座神経内科学分野の蝦名潤哉助教(任期)、同放射線医学講座の水村直臨床教授、同内科学講座神経内科学分野の狩野修教授らの研究グループは、従来パーキンソン病の補助診断で用いられてきたMIBG心筋シンチグラフィー検査を応用し、半自動定量的解析手法により耳下腺及び顎下腺の交感神経障害がみられることを報告しました。今回の研究成果は、パーキンソン病の病態解明の一助になることが期待されます。

 

本研究成果は2023年5月24日に「Journal of Neurology」誌にオンラインにて先行公開されました。

 

発表者名

蝦名 潤哉(東邦大学医学部内科学講座神経内科学分野 助教(任期))

水村 直(東邦大学医学部放射線医学講座 臨床教授)

狩野 修(東邦大学医学部内科学講座神経内科学分野 教授)

 

発表のポイント

  • パーキンソン病における耳下腺・顎下腺交感神経障害を明らかにしました。
  • 半自動定量的解析手法を用いた唾液腺MIBG集積を評価し、データの均質性を保つことを可能にしました。
  • 末梢臓器におけるパーキンソン病病態進展過程に不明な点が多く、本研究が解明の一助になる可能性があります。

 

発表概要

パーキンソン病(Parkinson’s disease: 以下、PD)(注1)はドパミン神経細胞障害に伴う運動障害疾患ですが、自律神経障害等の非運動症状も多彩です。MIBG心筋シンチグラフィー検査(注2)はPDの補助診断法として本邦で利用可能であり、PDをはじめとするレビー小体病で心臓交感神経障害を呈することが知られています。一方で、心臓以外に唾液腺等の消化管や皮膚等の末梢臓器にもレビー小体が見つかっていますが、どの時期から病変を生じるのか不明でした。

そこで研究グループはMIBG心筋シンチグラフィー検査を頭頸部でレビー小体が好発する大唾液腺(耳下腺と顎下腺)に適応し、新たな半自動定量的解析手法を用いて解析しました。PD群と対照群を比較したところ、耳下腺早期像・後期像、顎下腺後期像はPD群で有意にMIBG集積が低下していました。また、心臓MIBG集積と大唾液腺MIBG集積間に相関関係がなく、神経変性レベルの差異によるものと考えられました。

本研究成果はPDの病態進展理解に新たな局面を迎えるとともに、病態解明の一助になる可能性があります。

 

発表内容

PDは運動緩慢、振戦や筋強剛を呈する進行性運動障害疾患で、αシヌクレインを主成分とするレビー小体が原因物質です。PDでは非運動症状として、心臓交感神経障害を呈し、MIBG心筋シンチグラフィー検査を用いて評価することができます。心臓交感神経障害は病早期から認められ、MIBG集積低下がレビー病理の存在を裏付けますが、病理学的に大唾液腺(耳下腺/顎下腺)や皮膚など頭蓋外末梢臓器にもレビー小体は広く分布します。そこで、PD群における交感神経障害を評価する手法であるMIBG心筋シンチグラフィー検査を用い、病理学的にレビー病理好発部位である大唾液腺(耳下腺/顎下腺)を対照群と比較し、心臓交感神経障害との比較や臨床評価項目と比較しました。2020年10月から2022年11月に東邦大学医療センター大森病院でMIBG心筋シンチグラフィー検査を施行したPD77名と年齢を調整した21名の対照群を収集し、大唾液腺と心臓のMIBG集積を比較しました。MIBG心筋シンチグラフィーは従来の心臓集積評価のスキームに準じ、頭頸部と胸部の早期像及び後期像(123I-MIBG注射20分後と240分後)を撮像しました(図1)。MIBG集積は縦隔を中心に、心臓と耳下腺及び顎下腺を計算し、耳下腺では早期像及び後期像でPD群が対照群と比較して有意にMIBG集積が低下(早期像: p = 0.002, 後期像: p = 0.046)し、顎下腺ではPD群で後期像の集積低下を認めました(後期像: p = 0.034)。心臓集積ではPD群で早期像及び後期像も集積低下していました(早期像: p < 0.001, 後期像: p < 0.001)(表1)。耳下腺と顎下腺MIBG集積に正相関(r = 0.649、p < 0.001)が認められましたが、心臓集積と耳下腺及び顎下腺いずれでも相関が認められませんでした(心臓vs耳下腺: r = -0.089, p = 0.444)(心臓vs顎下腺: r = 0.092, p = 0.427)(図2)。また、顎下腺MIBG集積早期像と検査時年齢、MMSE(認知機能評価)、OSIT-J(嗅覚障害評価)に相関が認められ、心臓MIBG集積後期像と検査時年齢、OSIT-J、RBDSQ-J(レム睡眠行動異常症評価)、SCOPA-AUT(PDの自律神経障害評価)、MDS-UPDRS PartⅠ、Ⅱ及びⅢで相関がみられました。PD群と対照群での感度及び特異度は耳下腺後期像で感度54.8%/特異度59.1%、顎下腺後期像で感度59.5%/特異度61.0%でした。一方、心臓後期像で85.7%/特異度79.2%でした。

研究グループは、本研究で半自動定量的解析手法を用いて、PD群で大唾液腺交感神経障害を呈することを見出し、心臓集積と相関しないことを見出しました。半自動定量的解析手法を用いることで、症例間のデータの均質性を保つことを可能とし、縦隔を介した比較のため、より直接的に大唾液腺と心臓間のMIBG集積を比較することを可能としました。大唾液腺と心臓交感神経障害に相関がみられなかったことは交感神経節支配領域(耳下腺・顎下腺: 上頸神経節、心臓: 星状神経節)の違いによる変性領域の差を反映している可能性が考えられました。これまで病理学的に顎下腺をはじめとする唾液腺にレビー小体が蓄積することが知られていました。PDの病態進行仮説は腸管と嗅球から進展するデュアルヒット仮説が提唱されていますが、唾液腺をはじめとする末梢臓器にいつ進展するか不明な点が多く、本研究は心臓交感神経障害に加え、大唾液腺交感神経障害を評価することで、PDの病態進行理解に寄与する可能性があると考えられます。

 

発表雑誌

雑誌名

「Journal of Neurology」(オンライン版:2023年5月24日)

論文タイトル

Reduced 123I-MIBG uptake in the parotid and submandibular glands in patients with Parkinson’s disease identified using a quantitative semi-automatic method

著者

Ebina J, Mizumura S, Ishii N, Kobayashi Y, Shibukawa M, Morioka H, Nagasawa J, Yanagihashi M, Hirayama T, Kawabe K, Orimo S, *Kano O.

DOI番号

10.1007/s00415-023-11770-7

アブストラクトURL

Reduced 123I-MIBG uptake in the parotid and submandibular glands in patients with Parkinson’s disease identified using a quantitative semi-automatic method - Journal of Neurology
Objectives To analyze 123I-metaiodobenzylguanidine (MIBG) uptake in the parotid and submandibular glands in patients with Parkinson’s disease (PD) in comparison...

 

用語解説

(注1)パーキンソン病(Parkinson’s disease: PD)

運動緩慢(動作がゆっくりになる)、静止時振戦(何もしていないときに手足や頭頸部がリズミカルに震える)、筋強剛(体幹や四肢の体の固さ)を中核症状とする神経変性疾患。

運動症状の主病態は中脳黒質ドパミン神経細胞障害によるものであり、残存細胞内にみられるレビー小体が病理学的特徴である。運動症状以外に便秘や嗅覚障害等の様々な非運動症状を呈することがある。

(注2)MIBG心筋シンチグラフィー検査

123I-metaiodobenzylguanidine(MIBG)はノルアドレナリンの生理的アナログであり、交感神経節後線維終末で取り込まれる。従来心不全評価で利用されてきたが、パーキンソン病やレビー小体型認知症といったレビー小体病で心臓交感神経障害を呈することが知られており、補助診断法として本邦で保険収載されている。

 

添付資料

 

図1.頭頸部および胸部のプラナー画像

 

表1. PD群と対照群における耳下腺/顎下腺、心臓MIBG集積の比較

 

図2.大唾液腺と心臓MIBG集積の相関関係

参照元のプレスリリースはこちら

コメント

タイトルとURLをコピーしました